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骨学の基礎知識

頭蓋底の構造 — 前頭蓋窩・中頭蓋窩・後頭蓋窩

頭蓋底の3つの窩を中心に,各部位を通過する神経・血管と臨床的な重要ポイントを解説します.

内頭蓋底の3段構造

頭蓋骨の底部内面を内頭蓋底(Internal cranial base)と呼びます。脳を直接支えるこの部分は、前側から後ろ側に向かって階段状に低くなる3つの大きなくぼみ(窩)に分けられます。それぞれ前頭蓋窩中頭蓋窩後頭蓋窩と呼ばれ、各窩には特定の脳の部位が収まり、多数の孔を通じて脳神経や血管が出入りしています。

1. 前頭蓋窩(Anterior cranial fossa)

最も高く浅い前部のくぼみで、主に前頭骨の眼窩部、篩骨の篩板、蝶形骨の小翼によって構成されています。ここには脳の前頭葉が収まります。

  • 篩板の篩孔(しこう): 多数の小孔があり、鼻腔から嗅覚を伝える**嗅神経(第I脳神経)**が通過します。

2. 中頭蓋窩(Middle cranial fossa)

蝶形骨体、蝶形骨大翼、側頭骨の錐体および鱗部によって構成され、蝶形骨小翼の後縁から側頭骨錐体上縁(錐体稜)までの領域です。ここには側頭葉が収まります。中央部には脳下垂体が収まる**トルコ鞍(sella turcica)**が存在します。
中頭蓋窩には重要な孔が集中しています。

孔・裂の名前 通過する主な構造物
視神経管 視神経(第II脳神経)、眼動脈
上眼窩裂 動眼神経(III)、滑車神経(IV)、眼神経(V1)、外転神経(VI)、上眼静脈
正円孔 上顎神経(V2)
卵円孔 下顎神経(V3)
棘孔 中硬膜動脈
頸動脈管(内口) 内頸動脈

3. 後頭蓋窩(Posterior cranial fossa)

最も深く広い後部のくぼみで、主に後頭骨と側頭骨の錐体後面によって構成されます。ここには小脳、橋、延髄などの脳幹部が収まります。

  • 内耳孔(ないじこう): 顔面神経(VII)、内耳神経(VIII)が通過し、内耳道へ至ります。

  • 頚静脈孔(けいじょうみゃくこう): 舌咽神経(IX)、迷走神経(X)、副神経(XI)と、S状静脈洞から続く内頸静脈が通過します。

  • 舌下神経管: 舌下神経(XII)が通過します。

  • 大後頭孔(大孔:Foramen magnum): 頭蓋底最大の孔で、延髄が脊髄に移行する部位であり、椎骨動脈や副神経の脊髄根が通過します。

頭蓋底の臨床的意義

頭蓋底は多数の孔や裂隙が存在するため、力学的に弱い部分(ウィークポイント)があり、外傷によって頭蓋底骨折を起こしやすい部位です。前頭蓋窩骨折では篩板が損傷し、髄液鼻漏(鼻から脳脊髄液が漏れる)やブラックアイ(パンダの目徴候)、嗅覚脱失が生じることがあります。中頭蓋窩骨折では髄液耳漏や顔面神経麻痺、聴力障害が特徴的です。

また、中央のトルコ鞍には内分泌の中枢である脳下垂体が存在します。下垂体腺腫などの腫瘍が上方へ進展すると、すぐ上を走行する視交叉を圧迫し、両耳側半盲という特徴的な視野障害を引き起こすため、この部位の局所解剖学は脳神経外科・神経内科において極めて重要です。